アトピー性皮膚炎の標準治療の3本柱のひとつである外用薬による治療において、湿疹の重症度を判定することはとても重要です。
ステロイド外用薬はその強さによってランク分けされています。症状を速やかに抑え、コントロールしていくためには適切な強さの薬を使う必要があります。
そのため、専門医はまず最初に重症度を見極めて使う薬を決めます。
アトピー性皮膚炎の重症度の見方
重症度の見方はいくつかありますが、代表的なものは
- 湿疹のある範囲を見る
- 各部位の湿疹を点数化する
- TARC(血液検査)からみる
これらがあげられます。
湿疹のある範囲を見る
軽 症-面積に関わらず軽度の湿疹がみられる
中等症-強い炎症を伴う湿疹が体表面積の10%未満にみられる
重 症-強い炎症を伴う湿疹が体表面積の10%以上30%未満にみられる
最重症-強い炎症を伴う湿疹が体表面積の30%以上にみられる
各部位の湿疹を点数化する
日本皮膚科学会では、湿疹の内容や範囲を5つの部位に分けて点数をつけ、合計点で重症化をみます。
5つの部位-頭・首、体の後ろ側、体の前側、両上肢、両下肢
TARC検査
TARCとは、タークまたはタルクとよみ、ケモカインと呼ばれるたんぱく質 の一種です。(Thymus and activation-regulated chmokine)
端的に言ってしまうとこの検査でわかるのは炎症の度合いです。
ちょっと小難しい話になりますが、細胞から分泌されるたんぱく質の一種で細胞間の情報を伝達する物質をサイトカインといいます。
ケモカインはそのサイトカインのひとつで、白血球の遊走を誘導する働きがあります。
炎症が起こると患部に白血球が集ってきます。通常白血球は血液中にありますが、このように傷ついた組織へと集ってくることを白血球の遊走といいます。
アトピー性皮膚炎と関連が深いケモカインがTARCということがわかっています。
血液中に含まれるTARCの量によって炎症の度合いがわかるのです。
TARCの数値が高いと重症度も高くなります。
2008年に保険適用となり一般の診療所でも検査ができるようになっています。
このTARC検査により、以前はかゆみの度合いを伝える手段は口頭で説明するしかなかったのですが、医師と患者がともに数値で確認できるようになりました。
一見湿疹が治まっているように見える皮膚でもかゆみを感じることも多いです。そんなときはまだ皮膚の下で炎症がくすぶっていると判断できるのです。